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ある産婦人科で赤ん坊が生まれた。 その夜看護婦が赤ん坊の様子を見てみると、なんと赤ん坊は死んでいた 病院は事実を隠蔽するため、すぐに身寄りのない赤ん坊を身代わりに用意した 出産のとき母親は意識がなく、自分が産んだ赤ん坊をまだ見てはいない そして見た目が瓜二つな赤ん坊を選んだため、見破られることはないはずだった 次の日、母親は赤ん坊と対面するなり鬼の様な形相で叫んだ 「こいつは私の赤ちゃんじゃない!!」 【解説↓】 母親が赤ちゃんを殺した。
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【作品名】スライムもりもりドラゴンクエスト 衝撃のしっぽ団 【ジャンル】アクションゲーム 【名前】しっぽ団のももんじゃ 【属性】ももんじゃ 【大きさ】50cm程度 【攻撃力】回転しっぽアタック:身長と同じぐらいの長さのしっぽで全方位攻撃 30cmの石を2mほど吹き飛ばす 1mはある岩も宙に浮かぶ やると目を回し立ち直るまでに拳銃弾が6~7m飛ぶ程度の時間(約0.02秒)がかかる 【防御力】50cmのレンガを木っ端微塵にする体当たりに2回耐える 溶岩の中に投げ込まれて炎上しあちこちを走り回るが2回耐える 【素早さ】敵の存在を感知してから拳銃弾が3m強飛ぶ程度の時間(約0.01秒)で攻撃に移ることができる 移動速度は拳銃弾の1/3ほど 参戦:vol.1 481 488 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/01/14(木) 00 20 38 ID 4RxWxBTy しっぽ団のももんじゃ考察 △巨大象 倒せない踏まれない ○ロッズ 叩き落して勝ち ○○○馬蝗~しびれだんびら 攻撃しては逃げをくりかえして勝ち △△△ダイキリ~黄色くて以下略 倒せない当たらない ×スターマンの息子 PKフリーズ負け この上も分け連発 ダイキリ=しっぽ団のももんじゃ
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底 z 参加者コメント集 参加Pより一言他 その4 (Entry 16) アカギXXP (Entry 17) まこTP (Entry 18) 時雨P (Entry 19) 9 02P (Entry 20) たつのP(仮) 底辺スレ発 底 z祭りへ戻る (Entry 16) アカギXXP 個別紹介ページ (Entry 17) まこTP 個別紹介ページ (Entry 18) 時雨P 個別紹介ページ じちょうしなくてもいいじゃない まつりだもの しぐれ 時雨です。途中から勢いで参加しちゃいましたw dodoPの見てたらムラムラしてきてやっちゃったのよー。 すごく楽しかった。こういうのはあとからでも参加できるのが強みですね。 参加された方、視聴者の方含め、おつかれーさま。 これから上げるつもりな方、がんばってー。楽しいぞーw 色々思うところはあるみたいだけど、自分は今回十分満足しています。 渾身の20作目の再生数も悠々と超えて行きやがったしな!w さて、潜って〆動画の合唱を待ちましょうか。 (Entry 19) 9 02P 個別紹介ページ 396 で紹介していただいた動画を作らせていただきました中の人です。 実は、今朝のupまで、底 z祭りというイベントがあることは知らなくて、 UP後に「アイドルマスター」タグを検索してみたらなんだか「底 z」って タイトルに入っている動画がたくさん上がっていたので始めて知りました。 昼頃に巡回してみて、「タグつけようよ」、という応援コメントに 気づいたのですが、自分なんかが飛び入りしていいのかな、と思い メモ欄にて遠慮させていただいたのですが、晩飯のあとにもう1回 見ると、親切な方がタグをつけてくださっていました・・ わざわざつけてくださったものを消してしまうのも失礼ですし、 そこまで拘る必然性も全然無いので、有り難くお受けさせていただきました。 UPしていたものの、自信の無かった部分も少なくなかったのですが、 すごくたくさんの方に見ていただいたり、コメントをいただくことになり とても嬉しい1日になりました。 どうしてもこのイベントの関係各位の方々にお礼が言いたくて、 此処に辿り着きました。 此処でもいいんです・・よね? 皆さん、本当にありがとうございました。 (Entry 20) たつのP(仮) 個別紹介ページ タグ一覧:wiki 底'z
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説得 ◆tWGn.Pz8oA氏 キュッ、と蛇口のコックを絞る音が建物の中に響いた。 天と治は、出会った場所からいくらも離れていない軽食レストランにいた。 ヨーロッパ風に飾られた建物の中は、他の施設と変わらず薄暗い。 テーブルや椅子は、もはや人に座られるのを諦めたかのように整然と並んでいる。 それらが漏れ入る陽の光に所々照らされている光景は、どことなくもの悲しく感じられた。 天は水道水で濡れそぼったタオルを軽く絞ると、調理場から出て治が腰掛けているベンチへ向かった。 「氷はないみたいだから、ちっと温いけどこれで勘弁な」 「はい……でも大丈夫ですよ、オレ」 天はそう言う治に構わず、冷やしたタオルを治の後頭部にあてがう。 あれから治の意識はすぐに回復し、現在は打たれた場所の痛み以外に異常は現れていない。 「ま、一応だ一応!頭は俺も打ったことあるけどな……酷くなきゃ冷やして安静が一番なんだと」 「安静」という言葉を口にした天であったが、 こんなゲームの中で「安静」にしていられる時間がいくらもないことは承知していた。 治に吐き気や痙攣などの症状が見られなかったことには安心したが、以前かかった医者から聞いた話――― 頭部の打撲は後になって急に深刻なダメージが明らかになることがあるという話が、かすかな不安を煽る。 そんな天の心中を知らない治は、タオルを受け取り自分で打撲痕をおさえ直した。 出会ったばかりの自分のことすら本気で案じてくれる天の人の良さを感じたのか、 少し口元の緊張が緩んでいる。 「これからどうするんですか?……天さんは、ゲームに乗ったってわけじゃなさそうですけど」 「…ああ、極力人を殺すつもりはない。当分は人集めだろうな……治はどうなんだ?」 「オレは…ある人に会わないといけないんです。 天さんはここに来る途中、アカギっていう人に会いませんでしたか?」 アカギという名前に、天の目が見開かれる。 やはり天もひろゆきや原田と同様に、あの赤木しげると同じ名前を持つ青年を気にかけていた。 ホテルでは後ろ姿をちらりとしか確認できなかったが、その特徴的な髪の色は、 40代半ばですでに真っ白に染まっていた赤木の頭髪とそっくりだった。 それが自然のものなのか、あの赤木を模しているものなのかはわからない。 どちらにせよ無関係というわけではなさそうに思える。 「………俺は会ってないが、知り合いなのか?」 「はい、職場の先輩だった人なんですけど」 「職場………で、その赤木ってのはどんな奴だ?」 「えっ……と、簡単に言えば麻雀がすごく強くて、独特な信念を持ってる人です。 なんか普通の人間じゃないっていうか、次元が違うっていうか…とにかくすごい人ですよ」 「それっ………!見たのか?打ってるところを直接……!」 「もちろんです。ヤクザの代打ちをしてるところと、雀荘での勝負…たった2回ですけど、確かにこの目で」 偶然か、運命か、悪い冗談か―――? 天は体中の血が沸き立つのを感じていた。 勝負したい。その一念が頭の中を満たしていく。 他人の言う「強い」が実際どの程度のものなのかという問題は差し置き、 とにかくあの青年も勝負の世界に身を置く者だということが分かっただけで満足だった。 居ても立ってもいられなくなり、思わず拳を作ってベンチから立ち上がる。 「治……俺もそいつに会いたいんだ。一緒に探そう、そのアカギって奴を」 「は、はい………!天さんが一緒なら心強いですけど…… でも、こんなところで人捜しって難しいですよね…脱出資金を集めてる間に偶然会うくらいしか……」 「脱出資金?お前、棄権するつもりなのか?」 「えっ?天さんは違うんですか?」 「………ホテルでの説明で、奴らがなんて言ってたか覚えてるか?」 「……一億円で棄権の権利を購入できる……でしたよね」 「そう……あくまで権利を売るってだけで、実際にこのゲームから離脱させてくれるとは言ってない」 「ええっ……!そんなのひどい話じゃないですか……!!」 きょとんとしていた治の顔が一転、驚愕の表情に変わる。 確かにひどい話。だが考えてみれば、そもそもこのゲーム自体が恐ろしく非道なものである。 今さらどんな非情な罠が隠されていようが、当然と言ってしまえないこともない。 治はそれでも、天の言うことが単なる言葉遊びにすぎない可能性を捨てきれないでいた。 だが、これまでにも散々狡猾な人物たちと相対してきた天は確信している。 彼らの言葉には決して甘いところはない。 話の至る所に、受け手の思いこみとも気付かないような思いこみにつけ込む罠を張っている。 主催側がわざわざあのような言い回しをするということは、確実に何らかの意図があるはずだ。 一億を集めてもまず簡単にはリタイアさせてくれないのは間違いないだろう。 天がその考えを伝えると、治は肩を落として言った。 「そっか……オレ、考えが甘かったみたいです。ダメだなこれじゃ……」 「………治、でも…」 「でも、生きて帰る手段がなくなったわけじゃない……! ここでやらなきゃいけないこともあるし、ガッカリしてる場合じゃないんだ。そうですよね!」 天は落ち込んでいたように見えた治の発した力強い声に、一瞬呆気にとられた。 治の瞳は決して後ろを向いてはいない。それを見た天は、ふっと笑みをもらす。 「ああ、その意気だ」 「オレ、絶対生還して見せますよ。…天さんはこのゲームを潰すつもりなんですよね?」 「………ん、ああ…俺はとりあえず、死ぬ奴をできるだけ減らしたいんだ……」 天は少し言い淀んでそう答えた。 元々人情家の天は、一人でも多くの人間を死なせたくないがために、このゲームへの反逆を決めた。 少しでも多くの参加者を生きて帰らせるためには、やはりこのゲーム自体を潰すしかないと考えたのである。 だが一方で、アカギのような相手との勝負を強く望む気持ちもあった。 一人でも多く救うためには、一刻も早くこのゲームを破綻させる必要があるにも関わらず、である。 天はほとんど勝負のためだけに生きているような男であるから、 それも仕方のないことと言ってしまえばそれまでだが、彼の心中は複雑だった。 「そうしたら…やっぱりとりあえずは人を集めて………ん?」 その時、上下に空間のあるウエスタンドアの外から、人の声らしき音が聞こえてきた。 天は反射的に振り返り後方の窓を見て、そのまま視線の方向へ進んでいく。 遅れて治も天に追い付き、窓の外を見つめたまま声をかける。 「天さん、今………!」 「ああ……あっちだ」 治は天の指差す方に視線を向ける。 少し乗り出して覗きこむと、それまでは死角で見えなかった場所に二人の人物がいた。 一人はごく普通の中年の男、もう一人は白髪の老人。 そして奇妙なことに、老人の方が中年の男に手を引かれて歩いていた。 「あれは……代打ちの市川……?」 「知ってるんですか?」 「ああ、代打ち界でも指折りの打ち手ってので有名だ………いや、正確には有名『だった』か。 数年前から消息不明とは聞いてたが、まさかこんなところに…」 「へえ……あの人、目が見えないんですかね……?」 「ああ、盲目らしい……手を引いてる男も脅されてるようには見えないし、比較的安全かもな…… よし、声かけるぞ」 ◆ 「………で?確かに儂は数年前まで代打ちをしてたが………何か用か?」 「やっぱりそうか。個人的には純粋に対局でもしたいんだが、まあそういう場合でもないよな。 とりあえず、アンタらが今何を目的に動いているか聞いていいか?」 市川は代打ち時代について触れられたためか、少し苛立った表情で天たちに向かっている。 その横に立つ石田は、はじめ強面の天に腰が引けていたが、 はっきりと敵意がないことを告げられてからは少し緊張が解けたようだった。 天の質問に市川が口を開こうとしたが、先に石田が拡声器を掲げて答える。 「私たちは、今からこれで殺し合いに乗ってない人たちに呼びかけようと思ってたんだよ……! ちょうどよかった……!君たちも殺し合いに乗ってないんだろう?」 「………呼びかける……?」 「そう、つまり仲間を募るんだ……! そうすれば同志の人たちが集まるし、参加者の中にいる頭の切れる知り合いとも合流できるかもしれない。 その人ならきっと、君たちにとっても力になってくれるはずだよ……!」 「ちょ、ちょっと待ってください……天さん、それってヤバいんじゃ……!」 治は天に困惑の表情で視線を送る。 石田は二人の態度に不思議そうな顔で説明を求めているが、天はそれを無視して市川に言い放った。 「どういうことだ……?アンタなら気付かないはずがないだろう……」 「クク………さて何のことやら……」 「とぼけるなっ………!こんなところで呼びかけなんかしたら、安全な人物なんて来やしない……! 集まってくるのは、ハイエナみたいな危険人物ばかりに決まってる……! そんなことくらい、あんたほどの人が気付かないわけがない…… なのになぜ止めないんだ?死にたいのかっ……!?」 「……えっ………?」 石田はこの時、初めて今までしようとしていた行為の危険性に気付かされた。 そんな馬鹿な。だってこれは、窮地に追いやられた自分たちにとっての唯一の希望の灯なのに。 そんな、そんなとうわごとのように繰り返しながら、石田はへなへなと地面に膝をついた。 「死にたいのか、だって………?そうさ、儂は死にたいのさ……」 そう言ってわずかに肩を揺らして笑い出す市川。 その声には、こんなところで邪魔が入るなんてとことん運がない、と自嘲の音が混じる。 「ククク……だがつまらない死に方をするつもりはさらさらない…… 儂は死に場所を求めてここに来た……どうせなら華々しく散りたいじゃないか……なあ……?」 そう言って市川は、おもむろにコートの前身頃を開いて見せた。 びっしりと張り付いたダイナマイトの筒。それを目にした天はますます驚愕と憤りを露わにする。 「馬鹿野郎っ……!何人も巻き込むつもりかっ……!?」 「そうだ……いいだろう?所詮か弱い餌を貪りに来る乞食共さ………ククク……」 「クソッ………!!」 天は弾かれたように市川に髪の毛が触れるほどの距離まで詰め寄ると、市川の見えない眼をまっすぐ見つめた。 市川は眼前で燃えさかる怒りの鼓動を感じながら、それを逆撫でるような笑いを続ける。 「クク……お前も儂に死ぬなと言うのか……?」 「……そうは言わない。死ぬなら勝手に死ねばいいさ…… だが、考えてみろ…!あんたがくくりつけてんのはダイナマイトだろうが…… それだけの量があれば、このふざけたゲームをひっくり返せるんだぞ……!」 「何を言うかと思えば……クク………興味ねえなあ」 「本当にそうか……?アンタ、死に場所を求めてきたと言ったよな…… たかが参加者数人道連れにしたところで、満足か? 雀ゴロやただの中年、そんな奴らばかり殺して満足するのかよ」 「…………何が言いたい」 「アンタにふさわしい舞台は別にあるってことさ…… どうせ死ぬなら、主催者の根城のひとつ潰して死んだらどうだ……! この場で一番殺しがいがあるって言ったら、奴らだろ……!」 「………………」 「ちっぽけな参加者には何もできやしないと高をくくって見物してる主催者たちを 吹っ飛ばしたときこそ、ホントに華々しい死に方ができるんじゃないのか……!? それがアンタの求めてる最期ってやつじゃないのか……!!」 下手に逆上させたら今ここで爆発を起こされかねない状況の中、天は必死に説得を続けた。 天の必死の啖呵を、治はただ息をのんで見守っていた。 市川は気圧されたようにしばらく押し黙っていたが、やがて口を開く。 「………わかった」 「…………ほ、本当か………?」 ああ、と市川は静かに頷き、ゆっくりと呆気にとられたままの石田の方に向き直る。 天は張り詰めた表情を崩して、市川の前から一歩退く。 そのまま市川に触れられて我に返った石田も、 とりあえず市川が死ぬのを止めたのだということを認識して胸をなで下ろした。 誰もが天の説得の成功を信じ、その場に弛緩した空気が流れる。 だがその刹那、空間をも切り裂くような音が緩んだ空気を掻き回した。 『聞けっ……!ここに一千万ある……!!得たくば、奪いに来いっ……!!』 3人は動くことができなかった。 拡声器から最大出力で吐き出された轟音―――それは紛れもなく市川の発したもの。 気がつけば石田の手からは拡声器が消え、それは今市川の右手に収まっている。 口を金魚のように開閉させる天たちに振り向き、市川は不気味に笑う。 「小僧、お前の言いたいことはわかった……だが、受け入れることはできねえな……」 【B-3/アトラクションゾーン/午後】 【治】 [状態]:後頭部に打撲による軽傷 [道具]:なし [所持金]:0円 [思考]:逃げるべきか迷っているが、基本は天に同行 アカギ・殺し合いに乗っていない者を探す 【天貴史】 [状態]:健康 [道具]:鎖鎌 不明支給品0~2 通常支給品 [所持金]:1000万円 [思考]:市川の行動を止める アカギ・殺し合いに乗っていない者を探す 【石田光司】 [状態]:健康 [道具]:支給品一式 [所持金]:1000万円 [思考]:ここから逃げ出したい カイジと合流したい ※有賀がマーダーだと認識 【市川】 [状態]:健康 [道具]:産業用ダイナマイト(多数) コート(ダイナマイトホルダー) ライター 拡声器 [所持金]:1000万円 [思考]:人が集まるのを待つ ※有賀がマーダーだと認識 031 束の間の勝者 投下順 033 二択 044 彼我 時系列順 042 虎穴 016 保険 治 050 混乱 016 保険 天貴史 050 混乱 022 華 石田光司 050 混乱 022 華 市川 050 混乱
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前へ 「い、今何か放送がありましたよ」 「みたいね」 町の入り口で、ミヤを追ってきたジュンサ―とジョーイは話し合っていた。 「それに『ロケット団』って言ってましたよ、サコさん」 「名前で呼ばないでちょうだい」 ジュンサーのサコはジョーイを一喝する。 「でも通報しておいたほうがいいわね」 ジュンサーはバイクを降りて無線を取り出す。 「ええと、ナイさん。ここはなんて言う町でしたっけ」 「フスリです」 ジョーイ、ナイが答えると、サコは頷いて無線を繋ぐ。 「っおわ!?」 スネ夫は駆けるジャイ子と衝突してよろける。 ジャイ子は振り向きもせずに扉へ向かった。 「おい待てよ!まだ牢屋の鍵」 スネ夫が言い終わる前に、ジャイ子は鍵を二つ投げつけてきた。 「あれ、何で二つ?」「おい、いいからとっとと開けろ!」 ジャイアンが急かすのでスネ夫は急いで牢屋に向かった。 スネ夫が去ると、のび太はあることに気づいた。 先ほど、ハクリューが倒れた衝撃で壁の扉が開いていた。 「しずかちゃん!?」 のび太は扉の向こうにある格子の中のしずかに気づいた。 スネ夫はジャイアンの牢をあけると、のび太を向く。 「のび太、ほら鍵!」 スネ夫の手から放たれた鍵がのび太にわたる。 のび太が格子の脇にある鍵穴に鍵を差し込むと、格子は音を立てて下に沈む。 「しずかちゃん!」 のび太はしずかに駆け寄る。 しずかは眠っていた。 のび太がしずかを背負って部屋に戻ると、ジャイアンが駆け抜けていった。 「ジャイ子を見つけるんだってさ」 スネ夫がのび太に話しながら近づく。 のび太は頷く。 「じゃあ僕らも後を」「待って」 背後から声を掛けられ、のび太は驚く。 しずかがのび太の背から降り、話し出す。 「話すことがあるの。のび太さん……いいえ」 しずかは一息ついて間を空ける。 「あなたはいったい誰なの?」 スネ夫は妙に緊張している自分に気づいた。 フスリの振興に侵入したとき、しずかに耳打ちされたこと。 のび太が怪しい、と。 その時いくつかの根拠も聞かされた。 スネ夫はそれを思い出していた。 (しずちゃんの言っていること、当たっているのかな) スネ夫は不思議とわくわくしていた。 「……何言ってるのさ。しずかちゃん」 のび太は笑いながら言う。 「僕は僕だよ?野比のび太だよ」 「いいえ、違うわ」 しずかは否定する。 「どうしてそう思うのさ?しずかちゃ」 「知らないのなら教えてあげるわ。 のび太さんはあたしのことを『しずかちゃん』とは呼ばないのよ」 突然、のび太の口が閉じた。 「のび太さんはあたしのことを『しずちゃん』と呼ぶの。 なのにあなたは、ポケモンセンターで会ったときからずっと『しずかちゃん』と呼んできた。 だから」「ちょ、ちょっと待ってよ」 のび太はしずかの言葉を遮る。 「まさか呼び方がおかしいからって別人だと決め付けるなんて」 「もちろんそれだけじゃないわ」 しずかは余裕を持った表情で告げる。 「のび太さんはね、ポケモンをやったことが無いのよ」 スネ夫はハッとして思い返してみる。 そういえばのび太はいつも流行のゲームを持っていない。 ポケモンもアニメや漫画でしか知らなかった。 だから早いうちにポケモンのゲームを手に入れ、のび太を羨ましがらせるのがスネ夫のいつもの遊びだった。 「それが……いったい何だって言うんだい?」 のび太は言葉を慎重に選んだ様子で聞き返す。 「じゃあきくけど。やったことの無いもので満ち溢れているところで旅するのよ。 あののび太さんが、そんなことを自分から進んですると思う? でもあなたは自分から挙手した。 旅立ちの日に」 しずかの答えに、のび太は押し黙る。 暫く沈黙。 やがて、のび太が口を開いた。 「ふふ、最初はうまくものまねできたつもりだったんだけどなぁ」 その口調は、のび太のそれとは違っていた。 そののび太がくるっと回ると、一瞬にして姿が変わる。 髪型も、体つきも、服装までもが変化した―― 「……あなたの言う通りよ」 のび太の『ものまね』をしていた少女が姿を現した。 少女のポニーテールが、遠心力から解放されてふんわりと重力に引かれる。 「ボクはユリ。みんなから『ものまね娘』って呼ばれてるの」 ユリは短く自己紹介する。 しずかはあまり反応せず、質問する。 「それで、本物ののび太さんはどこにいるの?」 ユリは首を横に振り、 「ボクは知らない。でも『ドラエモン』っていう……なんていうのかな?あれ。 とにかく『ドラエモン』が知っているはずだよ」 しずかは怪訝そうに首を傾げる。 「本当に?」 すると、ユリは軽く言う。 「本当だよ。だって、『ドラエモン』に頼まれてのび太にものまねしていたんだもの」 暫くしずかは、ユリの発言を秤に掛けているようすだったが、おもむろに駆け出す。 「いくわよ、スネ夫さん……ちょっと、スネ夫さん?」 「……え、ぁあ、痛ッ!!」 しずかは一連の出来事で既に放心状態だったスネ夫の尖がりヘアーを掴む。 「あと、ユリさんもついてきて!!」 そう言うとしずかはスネ夫を引っ張って走り出す。 ユリは意外そうな顔をしていたが、フッと笑い、後を追いかける。 「ドラえもん、ちょっと良いかな」 出木杉は手を上げてドラえもんの解説を遮る。 ドラえもんは不意をつかれ、出木杉を見る。 「なんだい?出木杉君」 出木杉は不敵に小さく笑ってから 「僕はどんなに専門用語や混合言葉が出てきても話の大体の流れを察して推測することができる。 どれほど話を複雑化しようとしても全くの無駄だよ。 だから君の考えもわかる。未来の用語を多用して話を複雑化している。 もちろん僕には問題ないことだが、正直に言うと面倒なんだ。 さっきの放送で、絶対に邪魔者がやってくるはず。いかに馬鹿な民衆も気づく。 僕には今、時間がない。どういう意味かわかるよね?」 ドラえもんは悔しげに舌打ちし、出木杉を睨む。 出木杉は蔑んだ目でドラえもんを見つめる。 「……わかったよ、出木杉君」 ドラえもんが重い口を開けると、出木杉は愉快そうに微笑む。 「それはいい考えだ。さて、今までの話でこの世界が何なのかだいたいわかった。 でも、それなら何故僕たちの親はこの世界にいない? いや、それとも現実の住人は子供だけしかいない……と言うべきか」 「……いいだろう」 ドラえもんは慎重に言葉を選び出す。 一呼吸終えると、ドラえもんは説明を始めた。 「僕はお世話ロボットとして開発された内の『質の悪い方』だった。 だから僕の道具には全てセーフティ・フォア・チルドレン、通称『SFC』が組み込まれている。 子供の安全を第一に考えた規制だよ。 僕の道具は、使っている人間が子供の場合、その子供が損しないようになるんだ。 例えば、のび太は何度も道具を使ってとんでもないことを仕出かすけど、いつも大事にはならない。 せいぜいのび太が怪我したり、道具が壊れたりするだけだ。 これらは『SFC』の影響。未来から支給される道具にも、いつも組み込まれている。 そう、あの道具にも同様に」 「…… なるほど」 出木杉は軽く頷く。 「のび太君にとって、親、もとい大人たちは邪魔な存在。 あの道具の性質上、そうなるね。 ずいぶんいろんなことがわかったよ」 出木杉の言葉をドラえもんは鼻息で返す。 「さて、ききたいことはもう」 バァン!! 突然、扉が爆発的に開かれた。 「モテ夫さん!?」 突然入ってきたジャイ子は、真っ先にそう叫んだ。 ジャイ子の目線が、床で寝そべるモテ夫に集中する。 ジャイ子は息を呑み、モテ夫に駆け寄る。 「モテ夫さん!?あぁ、モテ夫さぁ~ん!」 モテ夫を抱えると、ジャイ子は涙を流す。 「……ドラえもん」 出木杉はドラえもんに声を掛ける。 「彼女を連れて出て行ってくれ」 出木杉はジャイ子をあごで指しながら言う。 ドラえもんは驚いて言葉を返す。 「いや、僕は君を止めに」 「いいのかい?」 出木杉は小さく、しかし鋭く言葉を出した。 「さっきので、僕の力はわかっただろう? この世界ではポケモン勝負で強ければそれだけで上だからね」 ドラえもんは言い返そうとしたが、言葉を飲み込み、ジャイ子の元へ行く。 ドラえもんは泣きじゃくるジャイ子を促し、出口へ向かう。 「出木杉君……僕は必ず戻ってくるよ。君を止めに」 ジャイ子をモニター室から出すと、ドラえもんは出木杉に背を向けたまま語った。 「そう。楽しみにしてるよ。この世界の創造主と共に」 ハッとして、ドラえもんは振り返る。 「おい、まさか」「サカキ!」 出木杉が命令し、サカキがドラえもんの腕を掴む。 ドラえもんはサカキに引っ張られ、退室する。 残った出木杉はただ笑うだけだった。 ドラえもんは閉じられたモニター室の扉をじっと見つめた。 (創造主……この世界の……出木杉君、君はもう) 何度考えてもきりがないので、ドラえもんは溜め息をつく。 「ジャイ子~!!」 ジャイアンの声がきこえてきた。 その声はだんだん近づき、ジャイアンが現れる。 ジャイアンは急停止してジャイ子を見つける。 「おぉ、いたか。ジャイ……」 ジャイアンは泣いているジャイ子を見て、言葉を切る。 「ジャイア~ン」「武さ~ん」 しずかとスネ夫が到着する。 その時だった。 「サカキ、来い」 扉の向こうから出木杉の声がきこえ、サカキが動く。 サカキは扉を開け、急いで中に入った。 ドラえもんたちは口を挟む余裕も無く、それを見ていた。 やがてモニター室から爆音が聞こえてくる。 ドラえもんは恐る恐る扉を開けた。 「こ、これは……」 そこはもぬけの殻だ。 天井は開け放たれ、空にはヘリが見えた。 ロケット団のヘリが。 ヘリの中―― 「このままでよいのですか?」 サカキはこわごわと、隣席の出木杉にきく。 「何がだい?」 「あいつらです」 サカキはヘリの下の『フスリの振興』を指す。 「ああ、大丈夫だよ。気にすることは無い」 出木杉は笑みを浮かべながら言う。 「モテ夫も馬鹿な男だ。自分の成功で周りを見ていなかった。 本当はマツバも来ていなかったのに。 それに、あんないい実験をこんな小さな町を相手に行うなんて愚かだ。はは」 冷たい笑いがヘリの中で伝わる。 「さて、アカギはもう戻っている。僕らも戻るよ」 出木杉が命令すると、ヘリは前進しはじめた。 周りにも『R』の紋章をつけたヘリが集まってきていた。 ロケット団は町中にねむりごなを振りまいた。 民衆は次々と眠りに落ち、町は閑散とする。 ロケット団はその隙に、『フスリの振興』から次々と団員が雪崩れ込んできた。 よくもと言うほど大量の団員が現れる。 その中にはヒョウタの、エリカを抱えながら走る姿もあった。 ロケット団たちがヘリを浮上させ始めた頃だった。 突然地面から火が放たれる。 ガーディやウインディたちの炎。 マサコが呼んだ警察の援軍が現れたのだ。 ヘリの幾つかは燃え盛り、落下する。 それを急いで鎮火させている警察もいた。 ロケット団を捕まえ、色々聞き出そうという考えだろう。 騒々しくことが運ぶうちに、日はどんどん西へ傾いていく。 飛び立つヘリ、墜落するヘリ。 双方が夕映えにより、真っ赤に輝く時頃。 騒ぎは落ち着いてくる――と思われたが。 民衆が次々と起き上がることで、騒ぎは拡散していく。 雑音で満たされる町。 そんな空気の中、フスリの振興から九人がこっそり出てきて、民衆に塗れる。 「はあぁ~、ひどい騒ぎだった」 ポケモンセンターに入りジャイアンが落ち着いた様子で呻く。 「どうやら誤解は解かれたみたいだね。僕らを見ても何もしてこないから」 スネ夫はそう言うと胸を撫で下ろす。 「それはそうと、ドラちゃん」 しずかは話を切り出す。 「話すこと、あるんじゃないの?」 ドラえもんは言葉を詰まらせ、少し考える。 「ハヤトさん、スズナさん。ちょっとだけ席をはずしてもらえるかな」 ハヤト、スズナは少し不満げに見えたが、頷くと離れていった。 「さて、ジャイ子ちゃん」 ドラえもんが、まだモテ夫を抱えているジャイ子に声を掛ける。 「……わかってるわ。 警察のところに言って、ロケット団のことをいろいろ話してくれば」 「いや、そうじゃない。むしろ逆だよ。 警察に気づかれないように、僕らの町へ戻ってほしいんだ」 ジャイ子はきょとんとした様子でドラえもんを見る。 「あそこの町のほうが安全なんだ。 変にこの世界の人々を混乱させてはいけない」 ドラえもんの言葉をきいたジャイ子は、ゆっくりと頷くとモテ夫のポシェットを探る。 やがてボールを取り出すと、ジャイ子はポケモンセンターを出て行った。 「いったいあのボールは何だろう?」 スネ夫が密かに疑問を言う。 「空を飛べるポケモンか何かだろう。 それからユリさん。君も席をはずしてくれるかい?」 ユリが離れると、いよいよドラえもんが口を開く。 「さて、話そうか」 ドラえもんが三人と向き合う体制になる。 「君たちの顔に、すこし膨らんだホクロがあるはずなんだ。探してみて」 三人は意外なことを言われて驚くが、素直に顔を探る。 「あった」「あったわ」「お、あった」 三人ともホクロが見つかると、ドラえもんは頷く。 「それがこの世界に来る原因となったホクロだよ。 君らは現実の世界でそれをつけられたんだ」 「つけられたって、誰に?」 しずかが質問する。 「のび太君だよ」 ドラえもんはこともなげに言う。 三人が息を呑むのを見て、さらに話を進める。 「そのホクロの効果は『つけられたものに道具の効果を及ぼす』こと。 その道具とは、『見たい夢の世界に入り、体験することができる』道具なんだ。 のび太君はその道具を使い、ポケモンの世界に入り込む夢を見ている」 「ちょ、ちょっとまって」 スネ夫は口を挟む。 「それなら現実世界ののび太が目覚めれば僕らは元に戻るんじゃ」 「いいや。この道具は、夢の世界は現実世界と時間の流れが違うんだ。 現実世界ののび太はまだ寝ている。どれくらい寝たのかこっちから検討もつかない。 それにこの道具自体、よくわからないんだ」 「どういうこと?」 しずかはきく。 「それはドラちゃんの道具なんでしょ?ならどうして」 「違うんだ。僕の道具じゃ無い。未来から送られてきたんだ。 相手はわからなかった。それに僕が未来デパートに交渉している間、のび太が持ち出してしまったんだ。 のび太は恐らく……ジャイアンの家にいったんじゃないかな。 その時にジャイ子ちゃんと出会い、ポケモンのゲームを持っている人を探したんだ」 「で、でも俺はまだ新作買ってなかったぞ」 ジャイアンが意見を述べる。 「そうなのか。ならジャイ子はそう言ったんだ。 それで落ち込むのび太を見て、ジャイ子はモテ夫君のことを提案したんだ。 モテ夫君は新作を持っていたんだろう。 だからのび太は彼の家に向かったんだ」 ドラえもんは一息つく。 「僕がもっと早く未来から帰っていれば。 ついセワシ君やドラミのところで無駄話をしていたばっかりに……く~!!」 「ドラちゃん、落ち着いて!」 しずかは暴れだすドラえもんを抑える。 「まだ話の途中よ!」 「……ハッそうだった。 僕が戻ってきたとき、のび太は僕に計画を話した」 「ポケモンの夢を見て、その中で遊ぶって。 僕は不安だったけど……のび太君が楽しそうに話すものだからつい賛同しちゃった。 眠りに落ちてみると、しばらくしてのび太が僕を起こす。 その時、外はまだ暗かった。 のび太は外のポケモンを見て恐怖を感じたんだ。 僕は仕方なく『タンマウォッチ』を使い、時間を止めた。 外の様子を見に行くと、なんとまあリアルなポケモンの恐ろしいこと。 僕らは機械のあるモテ夫の家に向かうんだ。 そして機械を調べた。でもどうしても機械が止まらない。 やむなくモテ夫を動けるようにして、三人で話し合った。 そして機械を起動したモテ夫が十分に楽しめばいいと気づいた。 そして、こんどは僕とのび太。 僕らは兎に角この事件をうやむやにしたかった。 だからタイムテレビに記録を残すことにしたんだ。 僕らが世界の変化に驚いている様子をね。 でもね、のび太君は演技が下手だった。 だからポケモンの世界にいるはずの『ものまね娘』を探した。 そしてのび太のものまねをしてもらうことにした。 のび太はモテ夫を見張ってもらった。 そうして、タイムテレビに記録すると、君たちの前に現れた。 僕はその後すぐにのび太の所へ戻っていくつもりだった。 そしたらなんだ!?突然アカギとかいう男が現れた。 あんなもんきいていなかった僕はモテ夫の家に向かった。 でももういなかった。のび太君も一緒に。 僕は仕方なく、出木杉君が提唱したように、みんなを旅に行かせることを決めた。 ユリさんにはのび太のものまねをしたまま。いつばれるかわからなかったから」 ドラえもんは急にすまなそうな顔になる。 「ごめんねみんな。こんな危険な旅に」 「もういいんだドラえもん、そんなこと」 ジャイアンが強気で言う。 「俺たちはもうそんなこと気にしちゃいないぜ!」 ドラえもんはハッと顔をあげる。 スネ夫もしずかも、ジャイアンと同じように頷いてくれた。 「さあ、続きを話してくれよ」 スネ夫が急かす。 「うん。 君らが旅立った後、何日か立つと、出木杉から連絡があった。 君らと同じように旅に出たいって。 僕は最初面と向かってことわった。でもあいつは諦めなかった。 ある日、あいつはタイムテレビを見て、ユリさんのものまねに気づいた。 僕は出木杉にその弱みを握られた。 また何日かして、僕は出木杉と共に旅立った。 ついでに暴走しているモテ夫君を止めようと。 そして今に至るんだ。 出木杉はモテ夫を倒し、ロケット団を率いた。 あの様子。どうやらロケット団と密に連絡を取っていたらしい。 どこで出会ったのかしらないけど、今の脅威は出木杉に変わったんだ。 恐らく、モテ夫を満足させても、元の世界に戻れない。 機械の故障かどうかわからないけど……別の方法で道具を止めるしかない」 ドラえもんは口を閉じる。 注釈1:作者いわく、作品のモチーフは「のび太の夢幻三剣士」 注釈2:『夢の世界に入り込む道具』の補足説明(道具の説明書より抜粋) (映画等と若干違う点に注意) 夢の世界で眠っても元の世界に戻らない 夢の世界に物語は無く、道具を起動した人物が十分に満足する 「別の方法で、道具を止める。それしかない……か」 スネ夫は小さく呟くと、顔を上げる。 「ドラえもん。どうすればいいか、予想はついていないのかい?」 すると、ドラえもんは意外にも首を縦に振る。 「予想の範囲内だけど……あることにはあるんだ。 モテ夫君が……もしモテ夫君がこの道具を起動したなら、彼はこの世界の主人公のはず。 なのに彼はロケット団に加わり、完全な悪の立場にいた。 そして出木杉君にあっさりと負けてしまった。 ……そこから考えられることは一つ。 この夢の主人公。つまり道具を起動した人物は、モテ夫君以外の人物。 色々考えたけど、それができるのはただ一人。 のび太君が起動したんだ。そしてこの世界の主人公になった」 「でも」 しずかは口を挟む。 「のび太さんは今、行方不明。モテ夫さんの家から消えたってさっき」 「うん、そうなんだ」 ドラえもんは簡単に頷く。 「だから、モテ夫君が知ってるは……ん!?」 今更ながら、ドラえもんは自分のミスに気づいた。 「あ、アァ―!! モテ夫君たちを帰らせちゃったあぁ!!」 ドラえもんはそう叫ぶとセンターの外へ飛び出す。 残された三人は顔を見合わせ、ドラえもんの後を追った。 外にはがっくりと膝をつくドラえもんがいた。 「お、おいどうしたんだよ?ドラえもん」 ジャイアンが声を掛ける。 「……ごめん、遅かった。 モテ夫君たち、もう帰っちゃったみたい」 ドラえもんは小さく答えた。 しずかが慰めようとドラえもんに手を掛けるが、ドラえもんは急に立ち上がる。 「あぁ、僕はみんなをこんなひどいめにあわせておいて!! また僕が忘れていたせいで、みんなが困った!! もうだめだ。こうなったら僕は頭を叩き割って死んで償うしか……ああ!!ポケットがない!! はぁ~どうしようどうしよう」 「落ち着いて!ドラちゃん!!」 しずかは慌てて声を掛けるが、ドラ声の絶叫は止まらない。 そろそろ公害と化してきたところで、ある人物が近寄ってくる。 「あなたたち!」 その場の四人はきょとんとしてその人物を見る。 ジュンサーのサコだ。 「あなたたち、フスリの振興から出てきたわよね?」 すると、いち早くスネ夫は前に出る。 「ええ、でも僕たちは決してロケット団の仲間ではなくそいつらを」 「ご協力ありがとうございます!」 サコはスネ夫の高速言い訳を無視して敬礼する。 サコは、ドラえもんたちがロケット団を倒したと気づいてお礼を言いにきたのだ。 十分に礼を言い、サコが帰ると、しずかがドラえもんに声を掛ける。 「ドラちゃん。みんな困ったとか、思っているかも知れないけど、ドラちゃんの説明は役に立ったわ。 それにさっきのジュンサーさんのように、感謝している人もいる。 ドラちゃんもちゃんと、みんなに感謝されてるのよ」 ドラえもんが涙を流してしずかに「ありがとうありがとう」と言っている。 そんな所に、再びサコは現れた。 「言い忘れてたわ。そこの少年」 サコはまっすぐジャイアンを示す。 「へ?俺?」 「そう。ちょっとわたしたちの所へ来てくれる?」 途端に場の雰囲気が変わる。 「じゃ、ジャイアン何かしたの?」 スネ夫が恐る恐るきく。 「お、俺は何にもしてねえぞ!いやホントに」 「参考までに話を聞くだけよ。さあ速く」 サコに先導され、ジャイアンは連れて行かれた。 ジャイアンは最後まで仲間たちに言い続けた。 「なあ、俺はホントに何もしてないって!! 問題ないから!明日には戻ってくるぜ!!ホントだぜ!!」 「待ってるよ~ジャイアン!」(あ~あ、ついにやりやがったなあのゴリラ) スネ夫は内心ほくそ笑んでいた。 その後、ドラえもんたちは センター内にいた三人にジャイアンのことだけを話し、宿舎に入る。 センター内は負傷者で混み合っていたため、みんなは部屋に入るとホッとして眠った。 夜中――ジャイアンは交番から出てきた。 「勘違いしていたみたい。本当に悪かったわ。 早くセンターに帰りなさいよ!」 サコが声を掛けると、ジャイアンは手を振って応える。 「じゃあな!サコさん!」 ジャイアンは取調べの最中、サコの名前を聞き出していた。 「こら、名前でよばないでちょうだい」 サコは一喝すると交番の奥に入っていく。 「っあ~あ、終わった~」 ジャイアンは眠たそうに背筋を伸ばす。 「さ~て、とっとと帰ってとっとと寝て……ん?」 ジャイアンは前方から歩いてくる人物と目が合った。 その人物もジャイアンに気づく。 「ジャイ子!?」「お兄ちゃん!?」 二人はそう言うと、気まずそうに顔を逸らす。 「……あ、アタシ、警察に出頭することにしたの」 ジャイ子は重い口を開けて言う。 「……そうか」 ジャイアンはそう言ったあと、言葉を探すように目線を上に上げる。 「モテ夫はどうしたんだ?」 「ポケモンを使って帰ってもらったわ。 ……それよりお兄ちゃん。勝手にモンスターボールの中見ちゃったんだけど ……あのテッカニン捕まえたんだね」 ジャイアンは不意を突かれたが、「ああ、『あなをほる』覚えているあいつか」と答える。 「あれね、実はアタシのポケモンなの。 この町まで来るのにどうしても必要で、ツチニンに技マシン使ってそのまま進化させたの」 しばらく、ジャイアンが返答に困っていると、ジャイ子が近寄ってくる。 「あのテッカニンをアタシだと思って、大切にしてね……」 ジャイ子はそう告げると、交番へ走っていった。 ジャイアンには、走り去る背中がとても寂しそうに思えた。 「……一人にはさせねえよ。ジャイ子」 ジャイアンはそう声に出して誓うと、夜の闇に消えた。 モテ夫は『のび太たちの町』に帰ってきた。 ポケモンをしまうと、まずのび太の家に入る。 この町は初めのうち暫く観察していたから、モテ夫は知っていた。 のび太の家に、町を取り仕切る人物が集まっていることを。 モテ夫はやや緊張気味に、のび太の家の玄関を叩く。 中から一人の人物が出迎えてきた。 「ああ、モテ夫さん」 「や、やあ義雄君」 モテ夫は少しぎこちなくその人物の名を呼ぶ。 「……よく僕の名前がわかりましたね。話したことありましたっけ?」 モテ夫は一瞬ドキっとする。 名前を知ったのはもちろん、監視していたからだ。 でも、それを言うわけにはいかない。 「あ、ああ。たまたまね」 義雄は少し首を傾げ、中に案内する。 モテ夫は導かれて、のび太の部屋に入る。 ズル木、金尾が待っていた。 「よく来ました」「待ってましたよ」 唐突にそう言われてモテ夫は怪訝そうな顔つきになる。 「待っていた?どういうことだ」 すると、突然義雄が戸をピシャリと閉める。 「僕らは出木杉さんに頼まれたんです。 『モテ夫が必ずこの町へ戻ってくる。そいつを逃がすな。始末しろ』とね」 静かに語る義雄の手に、金属バットが握られる。 モテ夫は息を呑み、ズル木、金尾にも顔を向ける。 二人ともすえた顔つきで、手に〔どこから持ってきたのやら〕金棒とムチが握られている。 モテ夫が危機を察したときにはもう、遅かった。 「や、やめろ……やめろよお前ら。なあぁ、やめ、や――やめろおオォオ゛オォぉお゛ぉぁぁあ゛!!!……」 モテ夫の断末魔の叫びが、町中にこだまする。 ギンガ団アジト。 今ここにはモテ夫のおかげでロケット団も数人集まっている―― 「入って来い」 アカギは扉のノックを聞きつけ、声を掛ける。 入ってきたのは、マツバだ。 どうやらフスリにはいかず、ギンガ団のアジトにいたらしい。 「サカキ幹部から連絡がありました。 モテ夫元首領が倒されたそうです」 「倒された?誰にだ?」 アカギは不審そうにきく。 「出木杉英才、という名の少年です」 「出木杉……いったい何者だ?」 「はい、どうやらサカキ幹部が密に連絡を取り合っていた人物だそうで。 サカキ幹部の話によると、ロケット団を継ぐのにもっとも相応しい人物だそうです」 アカギはしばらく黙り込んだが、やがてマツバに声を掛ける。 「わかった。もう下がっていい」 マツバが一礼して退室すると、アカギは微かに笑った。 「ふん、あのガキめ。自滅したか。くくく」 再びノック音が響き、アカギは声を出す。 「入って来い」 入ってきたのは、マーズだ。 「失礼します。お呼ばれがあったので参りました」 「ああ、そうだった。今日か」アカギはそういうと、制服に手を掛ける。 「ベッドは、こっちだよ」 アカギに案内されて、マーズは軽やかに向かう…… やるべきことを終えたマーズは、アカギの部屋を出て扉にもたれ掛かる。 マーズはアカギの側近だった。 アカギの苦しみを身にしみるほど良くわかっていた。 ギンガ団の首領だったアカギがどれほど悔恨の念を持っているか―― 何日か経った。 空が新たな旅立ちを祝うように晴れ渡る早朝―― ドラえもんは小型の携帯のような機械を取り出し、ジャイアン、スネ夫、しずか、そしてユリにも渡した。 「ポケギアだよ。トレーナー同士で連絡が取れる。 この前のジュンサーさんがお礼に渡してくれたんだ。 僕はこれからみんなの町に戻る。 モテ夫君にのび太君のことをきいたら連絡を入れるよ。 それ以外にも、使う必要があったらどんどん使ってくれ」 ドラえもんはそう言うと、モンスターボールを取り出す。 「歩くのは辛いからね。ゲットしておいたんだ」 ボールからはキャモメが繰り出された。 ドラえもんはキャモメの足にしがみ付くと、みんなに別れを告げる。 「じゃあね。みんな。頑張って」 ドラえもんは飛び去っていく。 残されたのは六人。 みんなドラえもんと話し合って、一つ物事を決めていた。 『とにかく今はこのジム巡りを終わらせること。 そうすればきっと何か変わるはずだから』 「……じゃ、俺は行くぜ」 まずジャイアンが先陣を切り、スズナがその後をついていく。 「それじゃ、あたしも」 後に続いてしずか。 「僕も」 そして、スネ夫も。 「じゃあ、ボクたちも行こうか。ね?ハヤト」 「ひ、引っ付くな馬鹿!」 ハヤトはユリの手を払って進んでいく。 どうやらまだこの変化に慣れていないようだ。 ジャイアン メンバー 【ココドラ】(マスターボールでゲット、目で語る、割と素直) 【テッカニン】(元はジャイ子のポケモン) 【リオル】(収集癖があり、ジムリーダーのスモモと関係がある) 今までの道のり のび太の町→工場(ココドラゲット・スズナ同行)→ナタネの町(テッカニンゲット) →スモモ戦(リオルゲット)→フスリ直前(鋼同盟からメールをもらう)→フスリ(謎の夢) その他 ポケモンはルビー・サファイアまで経験済み スズナ(ユキカブリ二体所持、その他不明)が同行 スネ夫 メンバー 【ムウマ】(マスターボールでゲット、いたずら好き) 【チルット】(一旦逃がされそうになるが残る) 【ドガース】(どっかの町のゴミ捨て場でゲット) 【ポチエナ】(どろぼうが得意) 今までの道のり のび太の町(ムウマゲット)→トウキの町(スバメとチルットゲット、スバメ逃がす) →マツバの町(ドガース既にゲット、ポチエナゲット)→フスリ その他 ポケモンはダイアモンド・パールまで経験済み ムウマはトレーナーと意識を通わせられる。 しずか メンバー 【ナゾノクサ】(マスターボールでゲット、目で語る、素直じゃない) 【クチート】(いつの間にかゲット) 【???】(『フスリの振興』内の研究室で持ったボールの中のポケモン) 今までの道のり のび太の町→裏山(ナゾノクサゲット)→タケシの町→テッセンの町(鋼同盟からメールをもらう) →フスリ(クチート既にゲット、???ゲット) その他 こっそりポケモンはダイアモンド・パールまで経験済み ユリ メンバー 【ハスブレロ】(マスターボールでたまたまゲット、マチスの町で進化) 【ドンメル】(ハヤトのエアームド対策のためゲットしたポケモン) 今までの道のり どこかの町からドラえもんに連れて来られる→のび太の町(ここでものまね) →学校(ハスボーゲット)→ハヤトの町(ドンメルゲット、ハヤト同行) →マチスの町(ハスブレロ進化、SOSのメール)→フスリ(ものまねばれる) その他 ポケモン図鑑などは持っているが、実践経験はあまりない (ハヤト戦でやけに図鑑の説明やわざの効果を気にしていたのはこのため) ハヤト(エアームド・ズバット・ムックル所持)が同行 次へ
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■2ちゃんねるからの「怖い話」 兄が見たもの 赤ちゃん あの子は誰? アオスジアゲハ 足踏み 足柄峠の頂上付近 ある能力 赤さん アカギ 雨音 ■遺 跡 アンコールワット ■伝 説 アトランティス大陸 ■オー・パーツ アショカ王の柱
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登録日:2010/07/22(木) 18 56 26 更新日:2024/05/22 Wed 12 08 51NEW! 所要時間:約 3 分で読めます ▽タグ一覧 1992年 30年後の続編 しんぼう~しんぼう もっくん シコふんじゃった 周防正行 映画 本木雅弘 東宝 相撲 胡麻は7分だ 不動の平衡が出来上がる やがて足が絡み 帯と肉の間に指が潜り込み まわしのさがりが逆立ち 筋肉が膨れ上がり 足が土俵に根を下ろし 血が皮膚にのぼり 土俵一面を薄桃色に染め出す シコふんじゃったは1992年に公開された相撲コメディ映画。監督は周防正行で、主演は本木雅弘。 概要 珍しい相撲を題材にした映画と言うことで話題を呼び、各種映画賞を総なめにするなど、周防の名を大きく世に知らしめることになった作品である。 声優の林原めぐみも好きな映画にこれを挙げている。 2022年には本編から30年後の世界を舞台にした続編ドラマが制作・配信された。 竹中直人、田口浩正といった主要人物も引き続き出演しているが、時代の流れに沿って女子相撲部が誕生しているのが大きな違い。 ストーリー 伯父のコネで就職が決まっていた教立大学の学生・山本秋平は大学卒業するために必要な穴山教授の講義の単位をとるために、相撲部に入ることになる。大会で惨敗し、OBたちにバカにされ、三部優勝候補の相撲部に喧嘩を売られ、秋平たちは本格的に相撲に取り組むことになる。 登場人物 「勝ちゃいいんだろ!勝ちゃ!勝ってやろうじゃねえか!勝ってやるよ!絶対勝ってやる!なぁみんな!」 山本秋平 演:本木雅弘 大将。教立大学経済学部四年。卒業単位をエサに相撲部に入る。小兵ながら粘り強い相撲をする。 本木は周防の一般向け作品第1作「ファンシィダンス」に次いでの主演起用。 「まわしだっつってんだよ!」 青木富夫 演:竹中直人 副将。相撲大好きの8回生。相撲部を潰したくないために留年しまくっている。得意技は内無双・頭捻り・猫騙し(自称)。緊張のあまり良く下痢を起こす。終盤は今までの努力が報われる。 「大学のため、僕らのために、やるっきゃないです」 山本春雄 演:宝井誠明 先鋒。秋平の弟。プロレス部だったが川村に誘われ相撲部に入る。 「強くなりたい…」 田中豊作 演:田口浩正 次峰。体はでかいが気は小さい。ナンバ歩きを素でやるなど青木に才能を見出され半ば強制的に入部することになる。 「日本人、物事の本質を、見極めようとしない」 ジョージ・スマイリー 演:ロバート・ホフマン 中堅。英国のスオックフォード大学からの交換留学生。家賃を滞納しており、食費も宿泊費もタダの相撲部に入部する。まわしに拒否反応を見せ、スパッツを下に着て相撲をとる。 穴山冬吉 演:柄本明 相撲部顧問で秋平の卒業単位を握る人物。小兵ながら、元学生横綱。 川村夏子 演:清水美砂 相撲部マネージャー。穴山冬吉教授の研究室の大学院生。 間宮正子 演:梅本律子 巨漢マネージャー。アクシデントで欠員が出て、女性でありながら大会に出場する。あ、さらしでおっぱいかくしてるからね。 演者は一般オーディションで選出された。 追記、修正お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 猫ふんじゃったと見間違えてた… -- 名無しさん (2013-12-29 23 17 54) 昔はゴジラとかガメラばっかりに興味行ってて昔は見なかったけど、物凄く面白いね。ある意味テンプレ的なのかもしれないけど今の専門分野特化漫画みたいな面白さがある。ドラマもこんなんばっかだったら勢い取り戻せるかもなのに。 -- 名無しさん (2016-11-18 20 25 11) 脚本的な味付けもそうだけど、無駄にセリフが流暢だったり、イケメン美女だらけなのが今のドラマ。もっと雑味があっていい。 -- 名無しさん (2024-05-22 10 40 51) 名前 コメント
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それでイイんじゃない(それでいいんじゃない) ■作詞:成海カズト 作曲:成海カズト 編曲:石塚知生 ■初フルアルバム KJ1 F・T・Oに収録
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ワールドボクシング 対戦相手 コメント TSSから発売されたFC用ボクシングゲーム。 対戦相手 ラムパルド:ルイス・ヴァルデス コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る 草案 対戦相手 コバルオン:アカギ 某ボスの名前から -- (ユリス) 2017-04-22 16 32 03
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男とアルター ◆d4asqdtPw2 「ハア、ハア……こんなことなら賭けなんかに乗らなければ良かった……アカギ!! いや、アカギさん!! 助けてくれー!!」 涎をまき散らしながら無様に走る男が1人。 数時間前まで放っていた高貴なオーラは、どこか汚れて黒ずんだオーラになっているように見える。 有名な芸術家の生み出した彫刻のように美しいはずのその顔は、汗と涙でグチャグチャに歪んでいた。 彼の後方、十数メートルには髑髏を模した小型の戦車のような物体。 杜王町に発生した史上最悪の殺人鬼、吉良吉影。 その男のスタンド、キラークインの能力の1つ、シアーハートアタックだ。 「コッチヲ見ロ~ッ!」 「……って、ぬおー!」 叫んだせいで走る速度が落ちたのだろうか、シアーがジグマールに肉迫してきた。 シアーが右足に接触する……寸前のところでジグマールが右に大きく跳んだ。 受身をとって道路にゴロゴロと転がりながらも、なんとかすぐに起き上がった。 (この戦車はキャタピタ式だ。ならば小回りは利かないはず……) ジグマールの予想通り、戦車は進行方向を左に変更するために大きく旋回しなくてはならなかった。 これが好機とばかりに、つんのめりながらも再び走り出す。 後ろを振り向くと、そこには目標を自分へとセットし直した戦車。 「アカギのやつ……見捨てやがったなァ~」 くすんだ銀髪と突き出たアゴを思い浮かべて吐き捨てる。 さらに、心をブチ抜くようなアカギの鋭い瞳を思い出し、身震いした。 あいつのせいで……なんで自分だけがこんな目に……。 自分がここで死のリレーを繰り広げてる間、あいつは優雅にお茶でも飲んでいるのだろうか。 (不公平だ。そんなの不公平だッ!) だが、ジグマールの嘆きは的外れもいいところである。 アカギの提示した『リスク分担策』では、ジグマールとアカギのどちらが戦車に追われるのかは全くの五分。 それを喜んで受け入れたのは他ならぬジグマールであった。 ならばこの天と地とも離れた2人の状況も、至極公平なものであったのだ。 少なくとも、嘆いているばかりではこの状況は一向に改善しない。 彼に必要なのは、行動すること。 賭けに負けたことは覆せない事実だと受け入れて、その敗北の代償と戦うこと。 しかし、その相手である戦車は余りにも強い。 その硬度は凄まじく、ジグマールの持つ一切の攻撃は通用しない。 と言っても彼の持っている武器は鎖鎌とアラミド繊維を内蔵したライター。 クレイモア地雷も持っているのだが、効くかどうか分からない敵にこんな貴重な武器を消費したくなかった。 先ほどから隙を見ては鎖鎌を叩きつけ、アラミド繊維を押し付け……などの努力はしているのだが……。 「コッチヲ見ロォ~」 この戦車には傷一つ付いていない。 そんなわけで、武器を命中させても、戦車を少しだけ後方に吹き飛ばすくらいの効果しか得られなかった。 そして最悪なのが、戦車の生み出す爆発の威力だ。 確実に即死というわけではないが、一度食らってしまったら、しばらくはまともに動けないだろう。 そうなってしまったら後は疲れ知らずの戦車に嬲り殺されるだけ。 つまり即死でなくとも結局は、一度爆発を食らってしまったらそこで終わりなのである。 「なんで俺ばかりが……ぬあっ!」 動揺と疲労でフラフラになっていた足がもつれ、ジグマールは盛大に転んだ。 なんとか立とうとするが、体力の消耗が激しすぎる。 そうこうしているうちに、戦車は少しずつこちらへ近づいてくる。 「クソォ……こんなところで、死ぬわけにはいかんと言うのに……」 そう言ってから気がついた。 自分がそんなセリフを吐くのは何度目になるのだろうか。 最初に強敵、セラス・ヴィクトリアを撃破して以降、この殺し合いでの彼の戦績は散々たるものであった。 敗北を喫し、弱音を吐き、そして結局はギャラン=ドゥに頼りきりになる。 その繰り返しだ。 いつもいつも同じ失敗を繰り返す。 己の尾を追いかける犬のように同じところをグルグル回り、最期には犬のように死んでいくのだろう。 そういえば、セラスのときもギャラン=ドゥなしでは死んでいた。 たった1人ではただの1回も勝利を掴むことなどできない。 そんな男のどの口が「全宇宙の支配者になる」などとほざいたのか。 死ぬわけにはいかない? 馬鹿を言え。 確かに、お前は確かに死んでいない。だが、活きてもいない。 無能な心臓を守り、無能な脳に縋るだけ。 何も生まず、何も成さない無駄な生命活動を続けているだけ。 貴様が死んでも誰も何も思わない。嘆かない。悪者が死んだと喜ぶ人間さえいない。 ここで戦っている者たちは今頃お前の存在など忘れて、それぞれの戦いを始めている。 そして誰もが、お前より気高く、お前より眩しく死んでいくだろう。 その者達が駆け抜けて言った道の遥か後方を、トボトボと惨めに歩く情けない男がお前だ。 誰の視界にも入らないように、誰にも狙われないように怯えながら歩いているのか? 違うな。もともと誰もお前なんて見ていないんだよ。 お前の存在を認知する者など1人もいない。 お前が影響を与えることが出来る者など、ただの1人もいやしない。 ただの、1人も……! 惨めな生に縋りつき、無様な恥を晒すなら、いっそのこと 死ね。 ここで、今、死ね。 脳内に聞こえた声は自分のものなのだろうか。 それともアカギか? 劉鳳か? ……誰でもいい。この声の主が誰でも構わない。 反論できない。この声の言うとおりだ。 自分に残された最後のプライドであった人間ワープも、DIOのアルターには適わない。 世界を支配する能力。全てにおいて自分の能力より上級な能力だ。 その上何の能力も持たないアカギにいい様に扱われ、洗いざらい情報を『盗まれた』。 それだけじゃない、この会場には勇次郎やラオウのような化物がいる。 この戦車の能力の持ち主である吉良吉影のような恐ろしい能力者もまだまだいるだろう。 自分は、それらから隠れて生きるしかない。 誰にも影響を与えないように……。 いや、どうせ与えることが出来ずにどこかでのたれ死ぬのだろう。 ……ならば。 アカギにコケにされたショックと、長時間の全力疾走で脳に酸素が行き渡らなくなったことが、彼の思考を極限までマイナス方向へと導いた。 「もう……やめにしよう」 頭の中のどこかでポキンという音がした。 立ち上がろうと踏ん張っていた足から力を抜く。 支えを失った体は傾き、尻餅をついて倒れこんだ。 振り返らなくても分かる。キャタピラの音が近づいてくるから。 あと少しで、こいつは自分を殺してくれる。 惨めな命に終止符を打ってくれるのだ。 大丈夫、苦しいのは一瞬だ。 下手に動かなければ一瞬で自分を吹き飛ばしてくれるはず。 ……もうそこまで来ている。 自分が死ぬ寸前に爆発音が響くはずだ。 「コッチヲ見ロ~!」 ……来た。そして、爆発音が…… ヤマネェェン! (ほら、爆発音が……って、や……ヤマネェェンってなんだ……!) 振り返ると、自分を殺すはずの戦車は10メートル以上後方に吹き飛んでいた。 「オォィ……ジグマァ~ルゥ……なにしてくれてんだァ~?」 (……そうだ! 聞きなれた音じゃないか!) その音は『彼』の登場音。何度も何度も耳にした。 そして、この『彼』の黒い大きな背中も見慣れているものだった。 「ギャラン=ドゥ……!」 しかし、ギャラン=ドゥと目を合わせることが出来ない。 今自分はこの殺し合いから脱落した。 ここで生き延びたところで、DIOはおろか、誰にも勝つことなんて出来ない。 誰も自分を見ていない。 自分が影響を与えられる人物など……。 「……もういいんだ、ギャラン=ドゥ。僕は……」 「オォィ早く立てジグマールゥ~。お前に死なれると困るんだよォ」 弱音を遮った言葉は、胸の深くに巣食った絶望すらも打ち砕いた。 (僕に死なれると……困る……!) 確かにそう言った。僕の命に、確かな価値を見出している。 ……いた。見つけた、こんな近くに。 僕が影響を与えられる男がここにいるじゃないか。 ギャラン=ドゥが僕をいつも救ってくれていた。 何度も絶望の淵からも救い上げてくれた……! こんなに僕を助けてくれたギャラン=ドゥに何も出来ないまま死んでいくのは嫌だ。 だから……僕は……僕は! 「オイ~! 早く立て。逃げるぞ!」 「え……う、うん!」 ギャラン=ドゥに手を貸してもらいながらも、ジグマールはなんとか立ち上がった。 戦車から逃げるため、大地を踏みしめ歩き出す。 弱弱しく、だが確実に歩みを進めていく。 「ジグマール、なんでお前さっき死のうとしたんだァ……? お前が死んだら俺まで……」 「いいんだ。もう……いいんだ」 「あァ~?」 ギャラン=ドゥが訝しげにジグマールの顔を覗き込む。 だが、その真っ直ぐな瞳を見たギャラン=ドゥは「そうか」とだけ呟いて前を向き、足を進めた。 「ギ……ギャラン=ドゥ! 後ろ!」 ジグマールが叫んだのとギャラン=ドゥが跳んだのはほぼ同時。 戦車の方向に高く跳び上がり、拳を天高く振りかぶる。 「お前は……埋まってろ!」 咆哮とともに叩きつけられた拳は、戦車の真上から寸分の狂いもなく、垂直に叩きつけられた。 いくら戦車が頑丈でも、その下の道路はそうとは言えない。 殴られるままに道路にめり込み、ゴルフのカップのような穴へと埋まっていった。 シアーは無傷のまま、穴の中でキュルキュルとキャタピラを空回りさせていた。 「す……すごいやギャラン=ドゥ!」 「……やったかァ?!」 やっと解放されたジグマールたちは、どこかで休もうかと辺りを見渡す。 飲み物でも売っている店があればいいのだが、運悪くそこは住宅街のようだ。 仕方ないので適当に入る民家を見繕っていると……。 辺りに響いた突然の爆発音。 爆源はもちろん、あの戦車だ。 「「なにィ?!」」 綺麗にユニゾンが響いたが、その音色は吹き飛ばされた瓦礫が落ちる音によってかき消された。 雪のようにパラパラと降り注ぐ瓦礫と辺りに立ち込めた黒煙の中から、丸くて黄色い影が浮かび上がる。 「ななななんで?!」 「落ち着けェジグマールゥ……」 そうは言っているがギャラン=ドゥも信じられないといった顔つきである。 彼の見立てでは、あの戦車は人体程度の熱源に触れないと、爆発を起こさないはずであった。 なぜなら、ギャラン=ドゥが殴っても、走っている最中に障害物に行き当たっても、あの戦車は一切爆発しなかった。 爆発したのはランタンなどの熱源に接触した場合のみ。 なら、なぜ爆発を……。 「まさか摩擦熱?!」 ジグマールに言われるまで完全に見逃していた。 たとえ戦車が穴から脱出できなくても、そのキャタピラは動き続けていた。 そして破壊された道路の破片は穴の中に散らばっている。 それらがキャタピラと擦れて熱を発したというわけか。 「なるほどォ~」 この方法もダメか。ギャラン=ドゥが唇を噛む。 自分がこの戦車を押さえてるうちにジグマールが逃げる、ということが出来るのならば、それが一番簡単だ。 しかし徳川の老人のせいで、ギャラン=ドゥはジグマールから遠くへは行けないということになっている。 人間ワープでこの戦車を遠くへ吹き飛ばそうにも、その人間ワープ自体に制限が掛けられてしまっていた。 アルター能力を全力で使って数メートル飛ばすなら、殴った方が遥かに効率がいい。 この状況になるのが分かっていたのではないか、と言うほどいやらしい制限だ。 「チィ……走るぞジグマールゥ。何か熱源を探せェ」 「そんなこと言っても、こんなところにそんなもの……」 ジグマールの言うとおり、住宅街のど真ん中で熱源を探せなどと言っても無理がある。 しかし、他に策がないのだ。 囮になるような熱源を探して夜の住宅街を疾走しだした。 「コッチヲ見ロ~」 「しつこいんだよォ」 ギャラン=ドゥの拳に吹き飛ばされたシアーが後方に吹っ飛ぶ。 しかしすぐさま体勢を立て直して追いかけてくる。 熱源を探し続けて10分。 見ての通り、成果はない。 戦車に追いつかれそうになってはギャラン=ドゥが殴り飛ばし、その間に逃げる、の繰り返しだ。 速度的には逃げることは不可能ではない。 だが、そうしなかったのはこの戦車の索敵方法が熱感知によるものだからだ。 熱探知の範囲上限が分からない。 戦車の姿が見えなくなったとしても、熱を感知されてジワジワと近づかれ、気づかぬうちに爆破させられる危険があった。 完全に逃げ切るにタイミングを探そうとはしているが、時間が経てば経つほどこちらが不利になる。 なにしろ相手には疲労がない。 対するこちらは疲れきったジグマールと、残り10分程度しか行動できないギャラン=ドゥ。 このまま突破口が見えないままでは明らかにこちらが負ける。 「こんなのDIOのアルター能力だって対処できないじゃないか……!」 自分より明らかに格上のDIOの『時止め』ですら何の効力も発しない相手。 物理的ダメージを無視し、際限なく追い続ける最悪の能力。 (完全に動けなくする方法があれば……) 高速で動く戦車から逃げるには、もはや動きを封じるしかない。 何かやつの動きを阻害するものか、やつを閉じ込める箱のようなものさえあれば……。 (そんな都合のいいものなんか……ん? 待てよ……箱……) 「そうか! ギャラン=ドゥ、こっちだ!」 「あァ? なんだァいきなり?」 「いいからこっちだ!」 叫びながら駆け出したジグマールをギャラン=ドゥが追いかける。 「……策があるのか?」 「……あいつを封じるには、あいつを閉じ込めるしかない」 明確な目的地でもあるのだろうか、ジグマールは走りながらもキョロキョロと辺りを見回している。 「閉じ込めるったってそんなものどこにあるんだァ?」 「……ここだ。ここにある、いや『来る』んだ」 ジグマールが指したのはトンネルに出来た大穴。 地下鉄での大乱戦の際、ラオウとケンシロウが北斗剛掌波で開けた穴である。 外側から穴を覗くと暗闇の中に線路があるのが見える。 「……電車の中にやつをブチ込もうって魂胆かァ」 「あの戦車が熱源に向かって愚直に進むなら、電車のドアから律儀に出てくるなんてマネ出来るはずがない。 だからワープで一度電車に乗せてしまえば、何もしなくてもあいつは勝手に僕たちから離れていってくれる」 「言うのは簡単だ。だがなァジグマール、ヤツをワープさせられるのは俺だけだ。お前はヤツに触れることができんからなァ。 しかし俺の体力も残り少ない。お前の外にいられる時間はあと5分ほど、ワープは使えて一回が限度だ……」 「それでいいんだ……あの戦車は疲れを知らない。いつも同じ速さで僕を追いかけてくる。 だからタイミングは計ることはそんなに難しいことじゃない」 理論上ではその通りであろう。 しかし、通過する電車の中にダイレクトに戦車をワープさせることはそんな簡単なことではない。 まず、ギャラン=ドゥが戦車に触れた瞬間に、電車が人間ワープの有効範囲数メートル以内に存在していることが絶対条件である。 さらに相手はジグマールを目指して走ってくる。 つまり彼が囮として線路の脇に立ち、戦車を線路まで誘導しなくてはならない。 あたり前だが、ジグマールに戦車が当たる前に戦車をワープさせなければいけない。 それに加えてギャラン=ドゥの体力も残り少ない。 一度失敗したらギャラン=ドゥは体力が尽きて、ジグマールの体から出られなくなってしまう。 そうなったら逃げる術など存在しない。 余りにもリスクが高すぎる。 「ダメだなァ。そんなことするくらいなら、人間ワープを連発しながら全力疾走で逃げた方が、まだ生き延びられる」 「たとえ逃げ切ったとしても、疲れきったところで殺し合いに乗った参加者と遭遇したら……間違いなく殺される。 それに、あの戦車の索敵範囲から逃げ切れるとは限らないじゃないか……」 ジグマールが熱弁するも、ギャラン=ドゥはその作戦に乗る気にはなれない。 自分がジグマールと命運を共にしている以上、ギャラン=ドゥは慎重にならざるを得なかった。 そうこうしているうちに、彼らを追いかけてきた爆弾戦車が近づいてきた。 「ウラァッ!」 俯いたまま動かないジグマールを尻目に、ギャラン=ドゥが戦車へと駆け出し、殴り飛ばした。 小さな車体が勢いよく吹き飛び、ゴロゴロと地面に転がる。 すぐに起き上がると、再びジグマールたちに向けて直進しだした。 「もう追いついて来やがった……オイィ、もう時間がない……とっとと逃げ……」 「ねぇギャラン=ドゥ。ここに来てから僕たち……何回逃げた?」 ギャラン=ドゥの背中に震えた声で呼びかけた。 しかしギャラン=ドゥはなにも答えない。 今まで、自分に逆らうことなどなかったはずのジグマール。 そんな彼の思いがけない反抗に、ギャラン=ドゥは困惑していた。 「僕たちは何回も、何回も逃げたよね? 分かってる……それは僕が弱いからなんだ。 でも君は違う。僕のせいで……君までもが逃げ続けなくてはならないなんて、僕は我慢できない!」 「しかし、その作戦が失敗したら死ぬんだぞ、ジグマールゥ? 今は確実に生き延びて、次頑張れば……」 「次っていつなんだよ!!」 ギャラン=ドゥは、ジグマールが自分に対して声を張り上げるのを始めて聞いた。 戦車と格闘し続けていたその体が一瞬だけ動きを止める。 だが、戦車が近づいてくるのを確認すると再びパンチを繰り出した。 「……DIOにこの作戦は不可能なんだ。 いくら時を止めようとも、電車の内側にワープさせるなんてことできないからね。 これは……君にしかできない作戦なんだ」 「……なるほど、お前がこの作戦に拘っていたのはそういう訳かァ」 完全に自分たちのアルター能力の上をいくDIOの能力。 その能力でさえ不可能なことが、自分達には可能だ。 ジグマールは証明したかった。 人間ワープが時止めを超えることは、可能だと。 「僕は全宇宙の支配者なんかにはなれない。それはこの1日で痛いほど思い知らされたよ。 でも、君ならなれる! 君は誰よりも強い! 僕は君のオマケでいい。 君の横で夢を見ているだけでいいんだ……!」 ギャラン=ドゥには目的があった。 人間が支配する世界を、アルターの支配する究極のアルターワールドへと創りかえること。 自分の創造主であるジグマールさえ、そのための隠れ蓑に過ぎなかった。 ギャラン=ドゥにとって、ジグマールは単なる捨て石だ。 そして、この殺し合いの中で、自分は何度もジグマールを殺したいと思った。 それが出来なかった原因は、主催者である光成の設けた制限。 ジグマールを殺してしまえば自分が死ぬ。 だから彼を生かしていたにすぎない。 自分が一番強いと思い込み、全宇宙の支配者になれると本気で思っている。 格下の相手には油断して、何度も死にかけている。 そんな男と命運を共にしているなんて最悪の極みだ。 しかし、こいつはその敗北の山から何かを掴み取ったのだろうか。 ジグマールの思考に大きな変化が起こっている。 ジグマールは、自分を頼りにしている。 今までのような『ピンチに役立つ便利な道具』としてではなく、1人の仲間として。 考えてもみれば、こいつがこの戦車のような『どうしようもない敵』に向かっていくような男だろうか? 駅構内の戦いで、誰よりも早く、無力な女より早く逃げ出したこいつが……たった1人で。 ……いや、1人じゃないんだな。お前は。 俺を支えにして、ビビって縮こまってる体を奮い立たせているんだな。 俺が、支えか……。 「おい、ジグマール……」 戦車を殴り飛ばしたギャラン=ドゥが振り返る。 「俺が外に出てくるときは、お前が死にそうになったときだけだ。 いつもいつも俺はお前の尻拭いだ」 ツカツカとジグマールに歩み寄るが、ジグマールは俯いたまま何も答えない。 「だからよォ……」 ジグマールの横に立つと。クルリと振り返り、彼と同じ方向を向いた。 ジグマールの顔が驚きの色に包まれるが、ギャラン=ドゥは彼を見てはいない。 彼が見ているのは前方の戦車。 「お前と肩を並べて戦うのは、これが始めてだなァッ!!」 戦車を睨み、ニヤリと笑って拳を構えた。 「ギャラン=ドゥ……」 ジグマールの顔が、驚きから笑顔と変わる。 「それじゃあ……行くよ!」 そして最後には、いつになく真剣な顔となって戦車を見据えた。 (こいつ、俺と同じ構えじゃねぇか) そうか、こいつはずっと負けるたびに俺の背中を見てきたんだったな。 ジグマールに聞こえないようにフフンと小さく笑った。 究極のアルターワールドを築き上げる。その目的は変わっていない。 だが、この殺し合いから生き残ったら……。 (こいつと一緒に全宇宙を支配するのも……悪くないかもなァ) 「ギャラン=ドゥ、あと何分間行動できるの?」 「あと、1分半だ。ちゃんと電車は来るんだろうなァ?」 ギャラン=ドゥが作戦に乗り気になったものの、彼が行動できる残り時間は少ない。 その間に電車が来なければ、作戦は失敗である。 「アカギと電車に乗る前に時刻表で確認したんだ。あと1分と少しで電車はここを通過する」 「ギリギリじゃねぇかァ……おっと、戦車が来るぞ!」 キュルキュルとキャタピラを回して近づいてくる戦車。 ジグマールの読み通り、そのスピードは全く衰えてはない。 常に一定の速度でくるからこそ、タイミングを取りやすい。 条件は整っている……! あとは時間通りに電車が通過してくれるかどうか、だ。 ギャラン=ドゥが1分ほど戦車と格闘していると……。 「ギャラン=ドゥ! 来た! 電車が来るよ!」 トンネルに響いた重低音を聞いて、ジグマールが叫んだ。 その声を聞いてギャラン=ドゥは戦車を殴り飛ばすのを止め、ジグマールの元へと走る。 あとはあの戦車がジグマールの近くまで来た瞬間に、戦車を電車の中へワープさせるだけ……。 「チャンスは1度だけだ。タイミングの指示を頼むぞ、ジグマールゥ」 「……うん!」 ギャラン=ドゥから「頼むぞ」と言われたのが、たまらなく嬉しかった。 ずっと見続けていた彼の背中に追いつけたのだろうか。 その横に、僕は立っていいのだろうか……。 ここに、ギャラン=ドゥの横にいる限り、自分は誰にも負けはしない。そんな気分にさえなった。 「おい、ジグマールゥ。まだ大丈夫なのか?」 「まだだ、まだ……」 爆弾戦車がジグマールに接触するまで、あと……1メートル。 電車の走る音は聞こえるのだが、その姿は未だ確認できない。 あと、50センチ。 電車の音が大きくなってきた。トンネルの中を微風が吹きぬける。 レールがカタカタと小さく振動しだした。 あと、20センチ。 「おい、まだか?! 爆発するぞ!」 「もう少し……もう少しだ……!」 ついに電車がその姿を現した。 ゴウ、という音を携えて巨体がレールの上を突進してくる。それと共にトンネル内に突風が吹き荒れる。 あと10センチ。 「もう間に合わん。ワープするぞ!」 「ダメだ! まだだ!」 戦車を掴んでワープさせようとしたギャラン=ドゥの手を、ジグマールが遮った。 電車は高速で近づいてきてはいるものの、まだワープの射程距離には入ってはいない。 しかしこれ以上待っていては、ジグマールが爆死させられてしまう。 「大丈夫、僕を信じてくれ……!」 気圧されたわけではない。 だが、気づいたときにはギャラン=ドゥは自分の手を引っ込めていた。 こいつを信じてみよう。 そんな気分になってしまったのだろうか。 あと5センチ。 「あと少し、あと少しだ」 (信じて……いいんだな?) 指示があったらすぐにワープさせられるように、ギャラン=ドゥは構えをとる。 電車もジグマールも見ずに、ただ戦車だけに注目して、耳を澄ましていた。 あと3センチ。 あと2センチ。 ジグマールはまだ動かない。 まだ電車が射程範囲に入っていないのだ。 あと1センチ。 電車は射程距離には入っていない。 (おいィ……ジグマールゥ……) ギャラン=ドゥは今になって、電車が射程距離から離れすぎていることに気がついた。 このままではマズい……。 たとえ戦車がジグマールに接触する瞬間にワープしたとしても、電車には届かないだろう。 そして……。 「コッチヲ見ロ~ッ!」 あと0センチ。 ワープの指示は、なかった。 「ジ……ジグマールゥッ!!」 驚き、叫んだ直後に我に返った。 まだ爆発していない……。 「ギャラン=ドゥ……!」 ギャラン=ドゥの横にジグマールはいた。 接触する直前に、ワープで移動したのだ。 突然ターゲットを見失った戦車は、一瞬だけ動きを止める。 それを確認したギャラン=ドゥがフン、と笑うのと同時に電車が射程範囲に入った。 「今だギャラン=ドゥ!」 ジグマールが叫んだ瞬間、ギャラン=ドゥが戦車を掴んで電車の中へとワープさせる。 「逝っちまいなァ!!!」 残されたエネルギーを全て使用して、爆弾戦車を電車へと送る。 ジグマールが命を賭けて図ったタイミングだ。 ここで失敗するわけにはいかない……! エネルギーを込めた手の平から、戦車の感触が消えた。 ワープは終了した、後は電車の中にちゃんと入っているかどうか。 大丈夫だ、失敗するはずなどない。 成功したと信じて、ワープさせた方向へと視線を移した。 さて、ギャラン=ドゥは本来ならばジグマールが死んだところで問題なく行動できる。 それが最終進化だ。 しかし、この殺し合いの会場では主催者によって掛けられた制限で、ジグマールと命運を共にせざるを得なかった。 行動範囲もジグマールの周囲数メートルに限定させられていた。 そのうえジグマールの外に出られる時間は30分程度。 そのせいで、何度も死にかけた場面があった。 彼らはこの殺し合いを綱渡りのような危うさで生き抜いてきたに等しい。 そして最もつらいのが、人間ワープの有効範囲だ。 100分の1程度にまで制限された人間ワープは、彼らをとても苦しめた。 だが、今ほどその制限を憎らしく思ったことはない。 100分の1に弱体化させられた能力を、他者に使ったのはこれが初めてだ。 ジグマールを抱えて敵から逃走したときなどは、距離を気にせずに前へ前へとワープしたからよかった。 だが、今回は違う。 大幅な制限になれていなかったせいで、人間ワープの距離が狂ってしまった。 ギャラン=ドゥの目に映ったのは、電車の手前で宙に舞う戦車の姿。 戦車は電車の中に入ってはいなかった。 ワープは……失敗したのだ。 (俺の……せいか……) ジグマールが命を掛けて繋いでくれたのに、自分が台無しにしてしまった……。 地面に着地した戦車は、すぐさま起き上がって走り出すだろう。 1人残されたジグマールは成す術なく殺される。 俺も、こいつもここで終わりなのか……。 俺のせいで……。 そう考えた瞬間、ギャラン=ドゥは無意識に走り出していた。 「そんな……」 ワープが失敗した。 その事実にジグマールは愕然とした。 と、同時にそれでもいいと感じていた。 一度だけでもギャラン=ドゥと肩を並べ、一緒に戦えた。 ずっと見ていた背中の隣で戦えた。 その結果で死ぬなら……。 (僕は……満足だ) 空を見上げ、死を覚悟する。 ジグマールの目に綺麗な月が目に映った。 宇宙の支配者になれば、あの月さえも手に入れられたのかな。 そんな大それた願いを鼻で笑った。 (僕には、宇宙は広すぎるや……僕が欲しい場所は、もう手に入れたから) もはやこの生に悔いは……ない。 月に見とれていたせいで、ジグマールは『それ』に気づくのが数秒遅れた。 「ギャラン…………ドゥ……何を?」 彼の目に映ったのは、爆弾戦車に向けて走り出すギャラン=ドゥ。 ほとんどのエネルギーを使い切ったのに……何をするつもりなのか。 「うおおおおおおおおおおおッ!!!」 俺は何をしているのだろう。 ガラにもなく叫んでいる自分に問いかける。 俺には夢がある。 アルターワールドを築き上げるという夢が。 そのためにはジグマールに生き残ってもらわなくてはならないのだ。 ……本当にそれだけか? (それだけじゃあないだろうなァ……) 純粋に、自分の野望など度外視しても、ジグマールに生きて欲しい自分がいる。 アルターワールドを手に入れたとしても、ジグマールがそこにいなければ物足りないのだ。 すぐに慢心し、弱音を吐き、自分に頼る。 そんな男でも、自分の唯一の仲間だから。 彼が命を賭けるには十分な理由なのだろう。 戦車を片手でわし掴むと、電車の壁面に押し付けた。 「ツレションしようぜェ爆弾さんよォ!!」 少しでいいんだ。この薄い壁面を超えるだけのエネルギーさえあれば……。 ……あるじゃねぇか。 俺は何で出来ている? アルターはエネルギー体じゃねぇか。 「ゴッヂヲヲヺヺヺヺヺ……」 電車の壁面に擦りつけられて、シアーの声が大きくブレる。 彼と電車が接触している面が摩擦で大きく火花を散らしていた。 「ぬおおおおおお……」 摩擦の熱で、この爆弾が爆発する前にワープさせなくては……。 体中からエネルギーを搾り出せ! 無様な真似は晒せねぇ……相棒が見てんじゃねぇか! ここで気張らなきゃ……アイツもろとも死んじまうんだぞ! 「見ィィ゙ィ゙ィ゙ロォォォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ッ!」 「うおおおおおおおおおおおおおッ!」 そして…… 爆弾は、電車の内部にカランと落ち、後ろの壁に勢いよく衝突した。 後にはギャラン=ドゥと戦車の作り出した爆発だけが取り残された。 「ギャラン=ドゥ!!」 吹き飛ばされたギャラン=ドゥにジグマールが駆け寄る。 限界以上にエネルギーを放出した状態で、あの爆撃を食らったのだ。 ギャラン=ドゥの体は3分の2以上が欠損していた。 「ジグマールゥ……あの……戦車は?」 ギャラン=ドゥの体はどう見ても手遅れで、血液の代わりに七色の粒子を垂れ流していた。 その粒子は彼の体を構成しているアルターのエネルギー。 「あれならちゃんと電車に入ったよ……」 「そう……か」 何で泣いているんだよこいつは……。 お前の陳腐な作戦は成功したんだろうがよォ。 DIOとやらに勝てるって証明できたんだろうが。 「なんて……馬鹿なことを……」 「仕方……ねぇ、だろ……2人、とも……死ぬ……より、は。 それに、アルター……は、死な、ない、一ヶ月……も、すれば、また……出て、こられる……さ」 たった一ヶ月だ。 お前がこの殺し合いに生き残れるかは心配だが、たとえ死んだとしても責めねぇよ。 だから、気にせず暴れて来い。ジグマール。 「そんな、君なしじゃ僕は殺されちゃうよ!」 「そう、か……そいつ、は、悲しい……な……でも、なぁ……」 まったく……弱っちい心は変わってねぇな……。 違う、お前は変わった。強くなったはずなんだ。 変わってることにおまえ自身が気づいてないだけだ。 「お前、は……もう……アルター、に……頼るな。お前……は、1人、で生きて……いける……」 「そんな! だってここにはDIOのような……」 「DIO……に、さっ、きの……アレ……が、できた……かよ?」 DIOが世界を支配するなら、その世界を捻じ曲げるのが俺たちの能力だ。 負けないさ、誰にも。 「あん、しん……しろ、お、まえ……は、最、強の……『アル……ター、使い』だ」 「『最強のアルター』使い……」 そうだ、そして……お前は……お……れ、の………… ギャラン=ドゥは七色の粒となり、空へと消えた。 「待って……!」 上空へと伸ばした手は空を切り、バランスを失って膝を着いた。 辺りに舞い散った七色は、月光の金色と混ざり合って美しく光る。 世界で唯一、ジグマールだけが感じることの許された、名も無き色。 しかし彼の目はその色を写すことなく。何も見ることはなく。 ただ目の前の空間を見つめている。 握り締めた手の中で、虹の粒が静かに弾けた。 【E-4 北東部 1日目 夜中】 【マーティン・ジグマール@スクライド】 [状態]:全身に負傷中(治療済み) 美形 中程度の疲労 [装備]:本部の鎖鎌@グラップラー刃牙 アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙 法儀礼済みボールベアリングのクレイモア地雷(リモコン付き)@HELLSING(未開封) [道具]:支給品一式 [思考・状況] 基本:?? 1:ギャラン=ドゥ……。 2:アカギの目標が聞きたい [備考] ※アカギと情報交換しました ※人間ワープにけっこうな制限(半径1~2mほどしか動けない)が掛かっています 連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます (例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労) ※ルイズと吉良吉影、覚悟、DIO、ラオウ、ケンシロウ、キュルケはアルター使いと認識しました ※吉良吉影の能力は追尾爆弾を作る能力者(他にも能力があると考えています)だと認識しました。 ※DIOの能力は時を止める能力者だと認識しました。 ※ギャラン=ドゥはエネルギー不足で外には出てこられなくなりました。 ですがジグマールは、人間ワープの能力を問題なく使えます。 【場所不明 電車内 1日目 夜中】 【シアー・ハートアタック@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]:異常なし [装備]:なし [道具]:なし [思考]:なし、単純自動行動。 [備考] ※制限のため、一般人でも何とか回避可能なスピードで攻撃してきます。 190 人形の名を名乗った娘 投下順 192 炎の記憶 190 人形の名を名乗った娘 時系列順 192 炎の記憶 183 I bet my belief マーティン・ジグマール 193 求めたものは